日常をぶち壊せ

 僕たちにとって日常は退屈なものだ。同じような一日が昨日も今日も明日も延々と続いてゆく。気が付けばもう二月。新年の浮かれた気持ちを引きずったまま、もう二月。僕たちはいつも何かデカい一発が来ることを待ち望んでいる。どうしようもない日常に刺激を与えてくれるスパイスを探している。

 今年最初の一発は二週間前に起こった。突如テロリストが表れて「要求をのまなければ72時間後に人質を殺す」なんてことを言った。それはまるでフィクションのようだった。こんな事件は普段なら映画や小説でしか見ることができない。でも、それは確かに現実世界で起こった。

 僕たちはそれをどう受け止めたか。8000km以上も離れた場所で起こったそれは現実と呼ぶにはあまりに遠かった。テレビから流れる映像は、身体感覚を伴わなかった。事件は「現実とフィクションの間」の出来事として存在することとなる。

 そうと決まれば祭りの始まりだ。事件があまりにも身近すぎる場合、それをネタにすることは憚られるけど、今回は違う。好きなだけ騒げばいい。ワイドショーはこぞって事件を取り上げ、ネット上でも面白おかしく盛り上がる。事件はエンターテインメントとして消費されてゆくのだ。僕たちは何でもエンターテインメントとして消費してしまう魔物と化した。最近、物事の消費のスピードが本当に早いなと感じることがしばしばある。事件発生時に散々盛り上がって、続報が入る頃にはもう次のおもちゃで遊んでいる。続報が実はすごく重要な点を伝えていたりすることだってあるのに、それらは見過ごされてしまうんだ。僕たちが求めているものは「正確な情報」ではなくて「楽しませてくれる情報」なのだろうと思う。