かつてピカピカの一年生だった何か

 ピカピカの一年生とはよく言ったものだ。

 今日から授業開始だったから、僕はリュックに荷物を詰め込んで学校へ向かった。近鉄阿部野橋まで行って阪和線に乗り換えるんだけど、なんだか妙に混んでいた。どうでもいいけど、僕は電車では必ず座るタイプだ。そのために一本見送ることだってしょっちゅうある。

 大学の最寄り駅に着くと窓口に行列ができていた。おそらく一年生で、定期券を買おうとしていたのだろう。彼らをよく見てみると、ピカピカしていた。服やリュックがピカピカしていた。大学生になるからということで新しく買ったのだと思う。

 その新しいリュックサックは自分ひとりで買いに行ったのだろうか。それとも、大学合格を祝って親と一緒に買いに行ったのだろうか。高校の友達かもしれない。なんにせよ、そのリュックサックを選んでいるときの顔はとても輝いていたんだろうな。そして、自分にもかつてそんな時があったのだろうな。

 

 学校を歩いていると高校の頃の友人に声を掛けられた。久々の再会だった。彼はスーツを着ていて、学内セミナーに行ってきたところだという。近況や共通の知り合いの話をして、そのうち就活の話になった。

 彼の話を聞いていて僕は自分が情けなくなった。彼にはしっかりとした「やりたいこと」があって、それにむかって努力を重ねていた。僕は未だにやりたいことが見つからなくて、気がつけばもう桜が散る季節になっていた。

 

 そこかしこで新入生の勧誘が行われていて、学内は賑わっていた。僕は人混みの中を早足で通り抜ける。不安と期待が入り交じった彼らの表情はあまりにキラキラと輝いていて、僕は後ろめたさでいっぱいになった。四年前の僕は、未来はきっと明るいものだと信じて疑わなかった。