残されたもの

 大学生になって、5年目の春が来た。僕と一緒に入学した人々は、新社会人として去って行った。

 窓を閉め切った薄暗い部屋でTLを眺める。先月、あんなに名残惜しく別れた仲間たちは、新しい環境で新しい仲間と楽しくやっているようだった。僕はどうしようもなく寂しくなった。みんなが一歩先へと進む一方で、ひとりポツンと取り残されてしまった気がした。

 

 僕は友達が少ないから、友達に友達ができると不安になる。例えば、僕に10人の友達がいたとして、A君は僕にとって1/10の存在だ。だけど、A君に100人の友達がいれば、A君にとって僕は1/100に過ぎない。A君の友達が200人、300人と増えてゆくほど、僕の存在は薄まってしまう。

「自分にとっては大切なひとりでも、向こうにとっては大勢のうちのひとりかもしれない」

昔からそんなことばかり考えていた。